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医師・医療関係者のみなさまへ

大阪産婦人科医会会員総会で高井会長が特別講演

府医ニュース

2024年6月19日 第3075号

最近の医療情勢を解説

 大阪産婦人科医会(光田信明会長)は6月1日夕刻、大阪市内のホテルで令和6年度大阪産婦人科医会会員総会を開催。会員122人が出席した。当日は、高井康之・大阪府医師会長が招かれ、特別講演を行った。

 総会では、光田・同医会長から5年度会務報告および決算報告と6年度事業計画・同予算が説明された。また、「おぎゃー献金協力施設」に感謝状を贈呈したほか、1年目の産婦人科専攻医が登壇し、自己紹介した。
 総会に続き、光田・同医会長が座長を務め高井・府医会長が「最近の医療情勢」と題し講演した。

指定医師の資格審査
医師会の責任は重大

 高井会長は冒頭、府医の母体保護、周産期医療など各種関連委員会への参画に謝意を表した。次いで、母体保護法を取り上げた。府医では母体保護法指定医師研修会を開き、人工妊娠中絶手術を行い得る医師を指定している。この指定医師の資格審査・指定権の民間団体への付与は、他の法律には類を見ない特色となっている。
 こうした背景を踏まえ高井会長は、「厳格な職業的自律と適切な法律の運用に努め、自重と自戒が求められる」と強調した。また、大阪府の指定医師数は全国1位だが、府医非会員も多いとし、医師会への入会促進が課題との認識を示した。配偶者の同意や経口中絶薬(メフィーゴパック)など母体保護を取り巻く状況には、産婦人科医会と連携し適切に対処していきたいと述べた。

かかりつけ医機能
包括化なじまない

 続いて、かかりつけ医機能について説示した。医師会はかねてより、「かかりつけ医は患者が信頼できる医師を選ぶものであり、義務化や制度化するべきではない」と提言しているが、財務省や経済界では、登録医や人頭払いといった医療の包括化が議論されていると憂慮。多様な医療ニーズには、医師らが複数で関わり、面として支えることが不可欠とした。また、かかりつけ医機能を発揮するためには、医師自身が自己研鑽し、国民に分かりやすく医療情報を伝えていく制度整備が大切だと力を込めた。
 第8次医療計画からは、医師確保に触れた。かつての医師不足による医学部の定員増員は停止され、現在は医師数をコントロールしていると説明。一方で、地域や診療科による偏在から定員増員の要望もあり、「適切な医師数の捉え方は難しい」としつつも、質を担保するには医師数のコントロールが有用との見解を示した。また、厚生労働省の基準によると、大阪府は全国7位の医師多数とされているが、高齢化に伴う医療需要の増加や働き方改革の影響から、決して医師過剰ではないと語った。
 医薬品の問題にも触れた。まず供給不安については、「採算性の低下やキャパシティー不足」など内的要因、「戦争・災害等に加え、日本独自の品質要求」などの外的要因を列挙。国のリーダーシップによる安定した供給体制の構築を求めた。また、長期収載品の処方等に係る選定療養に関しては、今後も注視する必要があると警鐘を鳴らした。オーバードーズ、サプリメントなど、医薬品を巡るトピックスも詳述した。

出産費用の保険適用
日医とも協力し対応

 最後に、財務省財政制度等審議会のいわゆる「春の建議」から社会保障・医療と少子化対策を中心に考察した。少子化対策の一環として出産費用の保険適用が検討されているが、現状でも十分に安全なお産がなされていると言明。医師会を中心に意見をまとめ、産婦人科医会や日本医師会と協力して対応したいと結んだ。