TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

調査委員会だよりNo.114

持ってますか? 医師資格証

府医ニュース

2024年6月5日 第3074号

 医師資格証は医師資格を証明するICカードであり、身分証として、またIT活用のために利用するものである。
 昨今、救急災害時やボランティア活動時のように本来の勤務先以外での医療行為で医師資格を示す必要がある場面が増加している。紙製でB4サイズの医師免許証を常時持ち歩くことは非現実的である。偶然医師免許証を持ち合わせていて示したとしても、顔写真が添付されていないので、容易には医師であることを信じてもらえないだろう。このような場合、医師資格証であれば、カードサイズで顔写真付きであるから身分証として実用的である。なお、日本医師会ではJMATなど、災害時における医療チーム派遣時にも医師資格証の携帯を推奨している。
 また、医師資格証はICチップの中に電子証明書が格納されていて、紹介状、処方箋などの電子署名、医療情報にアクセスするためのログイン時などに使用される。特に、MEDPost(文書交換サービス)のログイン時には医師資格証が必要である。なお、医師資格証の発行に際しては医師免許証の原本確認も行っているので、採用時における医師の資格確認に当たって、医師資格証による資格確認も可能(医政医発1218第1号/平成29年12月18日付)とされる。
 令和5年9月から10月にかけて実施した大阪府医師会員アンケート調査(回答数1252)によると、医師資格証に関する設問に関して、全体では、「持っている」42.7%、「申請中である」2.5%、「申請の予定である」10.6%、「申請の予定はない」24.8%、「知らない」19.4%であった。一方、電子認証センターの発行状況検索データによると、発行済み・審査中を含めて3351件(6年3月7日現在)、19.5%であった(同年3月1日現在府医会員数1万7192人で算出)。今回の結果と対比すると、「持っている」と「申請中である」との合計は45.2%であり大きな乖離がある。これは、アンケートの回答者は、医師会活動に積極的であるなどのバイアスがあるのかもしれない。
 業務種別にみると、「持っている」および「申請中である」は、診療所長55.3%、病院長44.4%、勤務医36.0%であり、立場によって差がみられた。特に勤務医において、「申請の予定はない」28.2%、「知らない」28.4%と、関心が低かった。勤務医は病院勤務の方が多く、電子処方箋を使用している率が高いと考えられるが、調査時点ではまだ移行していない病院も相当数あったものと推測される。
 電子認証センターによれば、府医会員の取得率19.5%は、日医会員全体26.7%に比較して明らかに低いが、「1年後には医師資格証の保有者は、全医師の約30%となる見込み(日医4月17日定例記者会見)」とされる。
 現在は半導体不足のため一時的に発行を見合わせているICカードを用いた医師資格証の代替案として、「デジタル医師資格証」が提供されている。医療DXの進展とともに、医師資格証の必要性は徐々に増加している。
 日医会員であれば、初回発行と更新は無料である。まだお持ちでない会員は取得を検討されてはいかがだろうか。

文 井上 澄江(高槻市)