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府医ニュース

2024年6月5日 第3074号

HPVワクチン、キャッチアップ接種

 5月22日、厚生労働省の予防接種基本方針部会が開催され、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種が議題となった。子宮頸がんを予防するための同ワクチンは、平成22年11月~25年3月に実施された緊急促進事業(公費助成)を経て、25年4月に、小学6年~高校1年の年代を対象とした定期接種となった。しかし、疼痛や運動障害を中心とした多様な症状が報告され、マスコミ等でも大きく報道されたため、同年6月の健康局長通知により積極的勧奨差し控えとなった。その後、厚生科学審議会での検討を踏まえ、約8年半後の令和3年11月に一時差し控え終了の発表がなされ、翌4年4月1日、接種機会を逃した人へのキャッチアップ接種が開始されている。期間は来年3月までの3年間で、現在の対象者は平成9~19年度生まれの女性である。標準的な接種間隔では、3回の接種に6カ月を要するため、公費で接種を完了するための初回接種のタイムリミットは、今年の9月末となる。ちなみに最も高価な9価ワクチンを自費で接種した場合の費用は、3回で約10万円とされる。
 積極的勧奨差し控えの影響により、キャッチアップ接種がなければ、子宮頸がんで命を落とす女性が毎年度1100人ずつ出現するとの推計がある。定期接種開始前後の対象年代(現在20歳代後半)の累積初回接種率は8割前後であるが、キャッチアップ初年度中に接種率が9割に高まれば、この年代とほぼ同等のリスクに軽減できると期待が持たれた。
 しかし実際の接種率は極めて低く、令和4年度のキャッチアップ接種の初回接種実施率は、全国で6.1%にとどまる。最高は島根県の10.8%、最低は沖縄県の2.1%、大阪府は5.2%である。定期接種も、全国平均8.4%(大阪府8.0%)と低調である。
 一方で、3年度以降の副反応疑い報告の割合は、平成25~29年度と比べて激減している。接種後の多様な症状に関しては、令和2年1月にWHOから、ワクチン接種ストレス関連反応(ISRR)の一部として、解離性神経症状反応(DNSR)の概念が提唱され、理解や対策が進んでいる。
 同部会では、今年行った調査結果が報告された。アンケートでの「知らない(聞いたことがない)」との回答が、HPVワクチンについては対象者本人の36.1%、母親の14.4%を、キャッチアップ接種に至っては、対象者本人の48.5%、母親の19.0%を占めるなど、周知が不十分な現状が明らかになった。
 インタビュー調査では、世代の違いに関し「小6~高3相当の女性は学校の授業や講演で認知しており、ニュートラルな受け取り方が多いのに対し、その母親は、報道で知った人が多く、接種後症状のイメージが強いため、ネガティブな印象が残っている人がほとんどである。大学生相当以上の女性も、ネガティブな印象を持った人が多い」とまとめている。そして「低年齢層を中心に、母親の反対意見を受け入れて接種をためらっている。母親においては、報道イメージが強く残っており、不安と予防の必要性との間で葛藤している傾向がみられた」と分析している。
 情報接触は、対象者本人、母親いずれもインターネットが中心であり、新聞や雑誌は読んでいない人がほとんどであった。中学生~大学生のほとんどがSNSを利用、大学生相当以上の女性は、テレビを見なかったり所持していない人も多かった。ただしHPVワクチンの情報は、対象者層を問わず「紙で受け取りたい」と考える人が大多数であり、規定回数の接種を完了した人からは「どれくらい痛いのかは事前に知りたかった」という意見が複数挙げられたとのことである。
 正確な情報を確実に届けるまで、残された時間は少ない。(学)