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医師・医療関係者のみなさまへ

生野区認知症・在宅医療シンポジウム

府医ニュース

2024年6月5日 第3074号

本人の気持ちに寄り添うことが大切

 生野区三師会など11団体で組織する生野区認知症高齢者支援ネットワーク会議および在宅支援ネットワーク会議は3月9日午後、「認知症・在宅医療シンポジウム」を同区民センターで開催した。「いつまでもこの街で暮らしていこう」をテーマに実施し、区民・関係者ら約320人が会場を訪れた。
 冒頭、主催者を代表し、谷本吉造・生野区医師会長があいさつ。同支援ネットワーク会議運営への理解・協力に謝意を示した。また、同区は高齢化率が高く、認知症対策や在宅医療体制の確保・充実が求められていると強調。住み慣れた地域で自分らしい生活を送れるよう、本シンポジウムを通して知識を深めてほしいと期待を寄せた。
 第1部のシンポジウムでは、「私は私らしく生きる――認知症当事者からのメッセージ」と題して、下坂厚氏(写真家・認知症当事者)、小林正宜氏(同医師会理事)、松本佳代氏(おかちやまオレンジチーム看護師)が登壇し、対話形式で展開。下坂氏は2019年、鮮魚店の会社を立ち上げた矢先に「若年性アルツハイマー」と診断された。最初は大きなショックを受け、すぐに会社も退職したが、「認知症初期集中支援チーム」によるサポートが立ち直るきっかけになったと振り返った。現在は、同チームから紹介された京都市内の老人ホームで勤務するほか、写真家として認知症の啓発活動にも取り組んでいると語った。最後に、家族や周りの人が診断を受けた際には関わり方が大切とし、「本人の気持ちに寄り添うことで、より長く元気でいられると思う」と伝えた。
 第2部では、朝田隆氏(筑波大学名誉教授)が、「まだ間に合う! 今すぐ始める認知症予防――人生をカッコ良く!!」と題して講演した。まず、高齢者の孤独は、認知症やうつ病のリスクを大幅に高めると指摘。あわせて、軽度認知障害(MCI)は認知症の予備軍であり、正常に戻る可能性があると説示したほか、MCIと軽度アルツハイマー病を対象とする根本治療薬「レカネマブ」の効果や副作用などを詳述した。さらに、認知症の危険因子や予防策に言及。社会交流や習慣化の重要性を示し、人生100年時代をいつまでも元気に過ごすために実践してほしいと呼びかけた。