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府医ニュース

2024年5月29日 第3073号

 紫の輝く花と日の光
 おもひ合はではあらじぞと思ふ

 紫式部を主人公にしたNHK大河ドラマの影響もあり、「源氏物語」への関心が高い。世界最古の長編小説と言われ、30を超える言語に訳され、世界各地の人々に読まれている。日本でも、数多くの作家が現代語訳を手掛けているが、与謝野晶子の『新訳源氏物語』が始まりだそうだ。晶子は11歳頃から「源氏物語」に親しみ、紫式部を「恩師」と尊敬し、より多くの人々に読み継がれるために、現代語訳に情熱を注いだという。各帖に晶子自身の想いを詠んだ歌が添えてあり、54首からなる和歌の連作は、「源氏物語礼讃歌」と呼ばれる。冒頭の和歌は、第1帖桐壺を詠んだものである。「流星の道」掲載(「絵巻のために 源氏物語」1924〈大正13〉年5月刊行)。当初、「源氏物語礼讃歌」を活字化するつもりはなかったらしく、屏風・短冊・巻物など様々な形態でごく親しい人に個人的に送られている。
 その後に明らかになった誤りや欠陥を修正し、源氏54帖のうち最後の『宇治十帖』を残すまで書き直したが、関東大震災のために原稿が灰になってしまう。またも一からやり直し、さらに17年かけて6巻本『新新訳源氏物語』を完結させた。晶子にとって最後の大作となった。
 5月29日は、晶子の忌日、白櫻忌だ。歌人、詩人、評論など多岐にわたる創作活動は、現代においても色あせることのない価値を持ち続けている。(颯)