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府医ニュース

2024年5月29日 第3073号

 ◆齢を重ねて風貌も気質も亡父にますます似てきたと感じる。良し悪しはあっても、自分のアイデンティティの確かな拠り所であろう。
 ◆非配偶者間人工授精(AID)の適応にあたって、「生まれた子どもに秘密にすれば問題はない」としてきたのが一般であった。しかし、成長して出自に疑問を持った時、AIDの子と確信した時に、自己否定によるアイデンティティクライシスに陥るという。
 ◆近年、AIDによって生まれた人達が声をあげている。「出自を話すことを前提に、AIDを選択してほしい」「隠すことで、親子の信頼が崩れかねない」「親子の絆だけを頼りにせず、支援も頼ってほしい」と。切実な声を受け止めたい。
 ◆子どもの権利条約に、出自を知る権利がうたわれている。医療が、「子を持ちたい」という願いの実現で終わることは安易ではなかっただろうか。子ども一人ひとりの個としての長い人生に思いをはせての選択と、成長過程にあっての支援を尽くすことが求められる。医療は医学の社会的適応であらねば。(翔)