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時事
府医ニュース
2023年11月15日 第3054号
10月30日、厚生労働省「医薬品の販売制度に関する検討会」第9回の会合が開催され、「議論のとりまとめについて(案)」が提示された。この検討会は今年2月に発足、検討課題の一つに、いわゆる零売が挙がっていた。零売は本来は分割販売を指し、明治時代の薬律でも用いられた言葉であるが、「処方箋医薬品以外の医療用医薬品の販売」の意味で使用されることが多い。
医療用医薬品(約2万品目)は、▼処方箋がないと販売・授与できない処方箋医薬品と、▼それ以外のもの(約7千品目)に分けられる。零売で取り扱われるのは後者であり、平成17年の厚労省医薬食品局長通知「処方せん医薬品等の取扱いについて」において、処方箋に基づく薬剤交付が原則だが、〝やむを得ない場合〟には、条件付きで販売が認められている。処方箋医薬品に関しては、大規模災害時等の正当な理由を除いて、処方箋なしでの販売は法律で禁じられているが、それ以外の医療用医薬品については、前述の通知があるのみで法律上の規定はなく、いわゆるグレーゾーン、抜け道となっていた。
近年は日常的に零売を中心に行う零売薬局やそのチェーン店も存在し、販売規模が拡大する一方で、「処方箋なしで病院のお薬が買える」「病院に行くより価格が安い」――等の広告事例が指摘されるようになった。令和4年8月には、適切な販売方法等について再周知する通知が発出されている。
代表的な薬剤は、▽抗アレルギー薬:フェキソフェナジン▽感冒・鎮咳去痰薬:カルボシステイン、デキストロメトルファン▽解熱鎮痛薬:アセトアミノフェン、ロキソプロフェン▽胃腸薬:ファモチジン、レバミピド▽整腸薬:ビフィズス菌製剤▽便秘薬:酸化マグネシウム、センノシド▽外用薬:外用ステロイド剤、真菌感染症治療薬▽点眼薬:ステロイド点眼薬、ピレノキシン▽シップ剤:ロキソプロフェンテープ▽栄養剤・ビタミン剤▽漢方薬――などである。
これらの中には、ステロイド点眼薬など、副作用の強いものも含まれている。また、OTCと同成分のものも多数あるが、添付文書などは医療者用に作られており、一般の人に必要な情報が、十分かつ分かりやすく提示されてはいないとされる。
議論のとりまとめ(案)では、やむを得ない場合に例外的に薬局での販売を認めることを【法令上規定】するとした。やむを得ない場合とは、①医師に処方され使用している医療用医薬品が不測の事態で患者の手元にない状況となり、かつ診療を受けられない場合、②OTC医薬品で代用できない、または代用可能なOTC医薬品が容易に入手できない場合――両者を満たすものとした。そして、(1)原則として、当該医薬品を調剤した薬局や、当該患者の状況を把握している薬局が販売(旅行先の場合は薬歴の管理確認や、通常利用している薬局と連携を図ること)、(2)一時的に(反復・継続的に販売しない)、最小限度の量に限る、(3)購入者の氏名、販売の状況等を記録すること――を要件とした。さらに、この販売方法に関する広告は、禁止すべきとした。
検討会では今後、一般用医薬品の販売区分や乱用の恐れのある医薬品の販売方法の議論が進められる。
(学)