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インボイス制度がスタート

府医ニュース

2023年10月25日 第3052号

診療所は個々の事情で判断を

 10月1日からインボイス制度が始まった。インボイス制度とは、主に消費税の取引に関連する仕組みの一つだ。取引の際の消費税額が明確に記載された書類やデータを「適格請求書」(インボイス)とし、その発行・保管を義務付ける制度である。取引ごとの消費税額を明確にすることで、正確な税額の算出と税収の確保とともに、不正な取引や脱税の防止が期待される。
 医療機関、特に診療所は免税事業者が多く、課税取引については明るくないと思われる。本欄では、一般的な説明や診療所目線でインボイスに触れたい。
 消費税の仕組みは、売上げ時に預かった消費税額から仕入れや経費に伴う消費税額を差し引き、税を納める。一般の課税取引では仕入税額控除が適用される。その条件として税務署への登録を行い、インボイスが発行される必要がある。しかし、仕入先が登録をしていないと、この仕入税額控除が適用されず、売上げ時に預かった消費税をそのまま納税しなければいけないこととなる。
 社会政策的な配慮に基づく医療、社会福祉事業などは消費税が課せられず、診療報酬は非課税となっている。登録を検討した方が良いのは、「事業者に対する課税売上」がある医療機関となる。たとえば、▽企業から健康診断や予防接種を受託▽医療法人診療所が企業から産業医報酬を受け取っている――などのケースだ。こうした場合、取引先の事業者からインボイス発行を求められる可能性がある。インボイス登録事業者になるということは納税義務が発生する。
 また、自由診療や予防接種・健診で常に1千万円を超える売上が生じていれば、課税事業者であり、こうした医療機関は、インボイス発行事業者として登録していても不都合は生じないと思われる。
 それに対して新型コロナウイルス感染症に係るワクチン接種で、多くの診療所では一時的に課税期間が生じるケースが考えられる。課税期間が発生するのは、自由診療の収入が1千万円を超えた翌々年(法人の場合は翌々事業年度)で、その期間は消費税の申告および納付を行う必要がある。なお、その後に1千万円以下となった場合、免税事業者となる。一時的に課税対象期間が生じたとしても直ちにインボイスに登録する必要はない。
 インボイス登録は任意だが、登録すると以後は申告、納税が義務となり、注意が必要である。消費税対応にあたっては、個々の医療機関で事業が大きく異なるため、届け出等も含め税理士や最寄りの税務署で相談されたい。