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内閣感染症危機管理統括庁が発足

府医ニュース

2023年10月18日 第3051号

新たな感染症の大流行に備え、政府の司令塔の役割

 岸田文雄首相の肝煎りで内閣感染症危機管理統括庁が設置され、令和5年9月1日に発足した。現行の計画は平成21年の新型インフルエンザ流行を踏まえて作られたものである。しかし、新型インフルエンザ以外の感染症は想定しておらず、ウイルス変異を起こす新型コロナウイルス感染症には対応できなかった。マスク等個人防護具の備蓄不足、ワクチンの供給および開発の遅れ、病床の逼迫など我が国の医療提供体制の脆弱さや感染拡大時に政府の対応が後手に回ったことが浮き彫りになった。統括庁は3年間のコロナ対策を振り返り、来年夏をめどに感染拡大時の指針となる政府の行動計画を抜本的に見直すという。
 統括庁は内閣官房に設置され、後藤茂之氏が担当大臣、栗生俊一氏(内閣官房副長官)が内閣感染症危機管理監、迫井正深氏(医務技監)が内閣感染症危機管理対策官となった。厚生労働省の感染対策部と連携を図り、統括庁が首相・長官を直接支えて感染症対応の方針の企画立案、各省の総合調整を一元的に所掌する。発足時60人体制で、専従は38人、感染症流行時は300人体制とする。
 また、感染症と自然災害に強い社会を目指す「ニューレジリエンスフォーラム」(共同代表:横倉義武・日本医師会名誉会長ら)は、統括庁を複合災害に対応できる「オールハザード型の司令塔」に発展させるよう求める提言書を岸田首相に提出している。
 厚労省は、感染症の分析・状況把握、予防接種施策、保健所支援、検疫の体制整備に取り組む。さらに厚労省の下に、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを一体的に統合した「国立健康危機管理研究機構」(仮称)が令和7年度以降に創設予定となっている。機構は、①総合調整機能②感染症の情報分析、研究、検査、危機対応の機能③国内外の人材育成・派遣、国際治験ネットワーク作り等国際医療協力の機能④総合診療機能、臨床研究推進の機能⑤NC(国立高度専門医療研究センター)の看護師育成の機能――を担う。米国の疾病対策センター(CDC)をモデルとしている。医務技監を結節点として、感染症対策部や国立健康危機管理研究機構の専門的知見の提供を確保し、危機管理監が司令塔となる仕組みである。
 コロナ感染同様、新たな感染症の流行はいつ起こるか分からない。平時から体制を強化しておかなければならない。