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医師・医療関係者のみなさまへ
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府医ニュース
2023年7月19日 第3042号
大阪府医師会主催による周産期医療研修会が7月1日午後、府医会館で行われた。第2回となる今回は「性教育について考える」をテーマにオンラインとの併用で実施。会場と合わせて約230人が聴講した。
笠原幹司理事はあいさつの中でLGBT法案の成立を引き合いに「性問題に関する世の中の認識が変わってきた」と指摘。本日のテーマである「性教育」にも理解を深めてほしいと述べた。
種部恭子氏(女性クリニックWe! TOYAMA代表/富山県議会議員)が、「健康な『性』を育む性教育」と題して講演した。はじめに、家庭や学校に居場所がない子ども達が「リスクの高い性行動を選ぶ」と指摘。行政も電話による相談体制を整えるが、電話を利用しない子ども達には届かないのが現実だと述べた。さらに、そうした子ども達の多くは、「相談をあきらめている」との持論を展開。改めて「性教育・相談のパイプ作り」が必要と訴えた。
近年のリアルな恋愛を求めない傾向にも言及。今までの「狭義の性教育」ではなく、性や恋愛を肯定的に捉える「包括的性教育」が求められると語った。種部氏は、「地域の実情に応じた性教育」の一例として、すべての市立中学校で産婦人科医師による性教育講座を実施する富山県の取り組みを紹介。事後のアンケートや保護者との共有なども実施し、一定の成果を得ていると胸を張った。その上で、エビデンスとファクトを盾に、「地域を巻き込み、学校を応援してほしい」と促した。
引き続き、野口直美氏(北翔大学教育文化学部教育学科准教授)が、「自らのあり方を選ぶ力をつける性教育」と題して登壇。思春期世代の現状を報告するとともに、ニーズに合った性教育の重要性を伝えた。
まず、性行為に伴うリスクに不安を感じる生徒が多く、「安心の獲得」が課題だと指摘した。また、10年前との比較から、▽恋愛が面倒と感じる▽出会いの場がSNSに移行▽リスクの高い性行動の増加――などを挙げ、性に関する指導の重要性を強調。集団・個別指導による相互補完が望まれるとの認識を示した。あわせて、目標を明確にし、健康課題を捉えたデザインが大切だと加えた。そして、性教育は一人ひとりが違いを認め合い、自分のあり方・生き方を選択できる力をつける教育だと結んだ。