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時事
府医ニュース
2023年7月5日 第3041号
6月2日、政府の医療DX(デジタルトランスフォーメーション)推進本部(本部長・岸田文雄首相)の会合が開催され、医療DXの推進に関する工程表が決定された。
基盤となるのは、マイナンバーカードを健康保険証として利用するオンライン資格確認(以下、オン資)である。このネットワークを拡充し、電子カルテ情報の「電子カルテ情報共有サービス(仮称)」への登録などにより、保健・医療・介護の情報共有が可能な「全国医療情報プラットフォーム」を構築するとしている。そして、検査結果などの医療情報や自治体保健事業の情報については、PHR(Personal Health Record)として、マイナポータルを通じて本人が一元的に把握可能な仕組みを整備する。さらに民間PHR事業者団体やアカデミアと連携し、ライフログデータ(個人の生活や活動のデジタル記録)活用の環境整備を行い、健康管理や疾病予防につなげるとしている。以下、主なものを年度ごとに整理する。
▽訪問看護、柔道整復師・あん摩マッサージ師・はり師・きゅう師の施術所等でのオン資の構築▽生活保護でのオン資の導入▽マイナンバーカード機能を搭載したスマートフォンでの健康保険証利用の仕組みの導入▽医療情報の二次利用に関する検討体制の構築▽予防接種、母子保健、公費負担医療や地方単独の医療費助成などに係るマイナンバーカードを利用した情報連携の実現(希望する自治体から運用開始)
▽健康保険証を廃止(秋)▽電子処方箋をオン資導入のすべての医療機関・薬局に導入(25年3月までに)▽電子カルテ情報共有サービス(仮称)の構築(先行的な医療機関から順次運用開始)▽3文書6情報【診療情報提供書、退院時サマリー、健康診断結果報告書、傷病名、アレルギー情報、感染症情報、薬剤禁忌情報、検査情報(救急および生活習慣病)、処方情報】共有の運用開始と順次対象情報の拡大▽救急現場で薬剤・診療情報が速やかに把握できる仕組みの整備▽介護情報共有の先行実施(希望する自治体)▽自治体実施事業の手続きに必要な診断書の電子提出の実現▽自治体検診(がん検診、骨粗鬆症検診、歯周疾患検診、肝炎ウイルス検診等)の連携開始▽クラウドベースの標準型電子カルテの開発に着手、電子カルテ未導入の医療機関を含め必要な支援策の検討▽電子点数表の改善・提供(診療報酬改定DX)
▽介護情報共有の全国実施▽共通算定モジュールを実装した標準型レセコン・電子カルテの提供により医療機関等の間接コストを極小化
概ねすべての医療機関における電子カルテの導入
岸田首相は、医療DX推進にスピード感を求めている。工程表決定後には、医療界、産業界と一丸になった取り組みを関係大臣に呼びかけ、加藤勝信厚生労働相は、実現に向け民間人材も活用した専門組織を省内に設置するとのことである。オン資義務化時を上回る強引さが発揮されても驚きはない。
すでに電子カルテを導入している医療機関にとっても、これまでの〝外部につながない〟セキュリティからの転換を迫られており、他人事ではない。対応困難な医療機関の閉院を促す事態にならないことを強く願う。
(学)