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時の話題

医療施設等の面会制限緩和拡大

府医ニュース

2023年5月31日 第3037号

安全な面会の環境整備に行政の支援が必要

 新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)の感染症法上の位置付けが、令和5年5月8日より2類から5類へと引き下げられた。これに伴い、医療機関、高齢者施設、介護施設での面会制限の緩和が拡大することが見込まれている。
 2年2月25日に「医療施設等における感染拡大防止のための留意点について」が厚生労働省より発出され、クラスター発生や緊急事態宣言下では、全く面会できない日々が続いた。コロナで亡くなられた方の火葬等は、同年7月29日付通知「新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方及びその疑いがある方の処置、搬送、葬儀、火葬等に関するガイドライン」により、原則としてコロナで亡くなられた遺体は非透過性納体袋に入れて火葬する等の扱いとなった。そのため、故人との最後の別れにも立ち会えず、葬儀もできず、火葬後にお骨となって戻ってくるという悲しい事態が続いた。患者や家族の要望もあり、10月15日には、「医療施設等における感染拡大防止のための留意点について(その2)」、3年11月24日には「医療施設等における感染拡大防止に留意した面会の事例について」が発出され、面会の留意点、オンライン面会の利用、ゾーニングの考え方等が提示された。
 5類移行への対応を見据えて、本年1月6日に上記ガイドラインの新旧対照表が出され、「適切なエンゼルケアがなされた遺体は、必ずしも納体袋は必要ない」ことが周知された。また、1月31日付の「高齢者施設等における面会の再開・推進にかかる高齢者施設等の職員向け動画及びリーフレットについて」では、①面会者名簿の記載、検温・手指消毒・マスク着用等の感染対策②面会人数は最小限とする③2週間以内に発熱等の症状や発熱者との接触がない④換気の良い部屋で面会⑤面会者は施設のトイレ使用を極力控える⑥面会後の椅子や机の消毒――などの注意を呼びかけている。
 毎日新聞は、全国のコロナ病床50床以上の医療機関141施設のうち回答が得られた71病院についてのアンケート調査結果を公表した。一般患者(カッコ内数字はコロナ患者)について、4月1日時点では「原則禁止」34(55)、「制限付きで可」36(15)、「制限なしで可」1(1)との回答が、5月8日以降は、同6(27)、同35(15)、同3(2)、「その他」27(27)となった。4月1日時点で5割弱だった一般患者の「原則禁止」回答は、5月8日以降1割弱に、同じくコロナ患者の「原則禁止」は8割弱から4割弱に減少した。
 「原則禁止」の理由は、「5類でもウイルスの感染力は変わらない」「コロナに限らず、感染性のある期間は面会禁止」と回答。あるがん拠点病院は、3年から面会禁止を継続する理由として「高度医療、急性期医療を担う役割から、感染リスクを避けるため。希望者は、オンライン面会としている。面会制限の緩和という国の通知には応えたいが、基準もなく、病院としてめどは立っていない」と回答した。
 高齢者施設や介護施設での面会でも、前述のような感染対策が必要である。長期間の面会制限は認知機能の低下や、うつ状態、食欲不振からの栄養状態悪化につながることが報告されている。アンケート調査ではまだ4割弱が「検討中」「緩和方針」となっているが、安全な面会の環境整備には、行政からの支援が必要と考える。
参考:毎日新聞5月10日朝刊