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黄砂に吹かれて

府医ニュース

2023年5月17日 第3036号

 今年4月中旬、大量の黄砂が日本に飛来した頃、「黄砂に吹かれて」(作詞:中島みゆき 作曲:後藤次利)という歌を思い出し、頭の中でこの歌がグルグル回りました。1989年に工藤静香が歌って大ヒットしたものです。同じような人は多かったようでその頃ツイッターで「工藤静香」がトレンド入りしたとか。
 もっとも私が以前よく聴いていたのは、同じ年に発売された中島みゆきのアルバム「回帰熱」(ポニーキャニオン)に収録されている中島みゆき自身が歌っているものでしたが。工藤静香が歌っているものは最近になって聴きました。テンポが違い、一部歌詞も異なっていますが、どちらも良いと思いました。
 失恋した女性が傷心旅行で向かったのは、よく歌にある「北国」ではなく、「黄砂に吹かれるところ」。時期によっては日本にも「黄砂に吹かれるところ」が出現しますが、この歌の場合、黄砂が生まれる乾燥地帯、シルクロードなどのイメージです。「あなた」から遠いところに行きたかったのが理由らしいです。失恋の歌に雨や雪のような湿ったものを持ってこず、乾いたイメージの黄砂を持ってきたのがユニークだと思います。黄砂に吹かれて目や皮膚がジャリジャリするような感覚は、割り切れない思いに結び付くような気がします。
 環境省のサイトによれば、黄砂は、従来は自然現象と理解されていましたが、近年はその頻度と被害が甚大化しており、環境問題との認識が高まっているとのことです。砂漠化などの人為的影響の側面もあり、また、飛来する途中で大気汚染物質を取り込んでいる可能性も示唆されています。おそらく、この歌が作られた約30年前は、自然現象との認識が主流だったのでしょう。(瞳)