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コペルニクス的転回

府医ニュース

2022年3月16日 第2994号

 東日本大震災発生から11度目の3月は、いまだコロナ禍だ。
 3回目のワクチン接種。ステルスオミクロン(BA.2株)の市中感染の広がり。病床の逼迫。感染症対策のため復興支援事業の中止や延期を余儀なくされ、支援を必要とする人達に十分寄り添うことができない状況だ。
 震災の後、「夜と霧」が被災地を中心にベストセラーになったことを思い出し、久しぶりに読み返した。著者は、強制収容所から奇跡的な生還を果たしたユダヤ人の精神科医ヴィクトール・フランクル。収容所での出来事を克明に記録した。恐怖と閉ざされた未来、奪われた時間の中で、次第に機能を失っていく(心の装甲)。不可避な苦難を強いられた時、いかにその状況を生き抜くことができるか、人間が最後まで真実の意味における「自由」を保持し得るかが論じられている。
 『ここで必要なのは、生きる意味についての問いを百八十度方向転換することだ。私たちが生きることから何を期待するかではなく、むしろひたすら、生きることが私たちから何を期待しているかが問題なのだ、ということを学び、絶望している人間に伝えねばならない』
 災害、疫病、そして戦争。今まさに直面している状況で、いかに振る舞うか。
 『考えこんだり言辞を弄することによってではなく、ひとえに行動によって、適切な態度によって、正しい答えは出される』(『』内は、「夜と霧」新版 池田香代子訳/みすず書房)(颯)