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時事

身寄りがない人への医療機関の対応方法

府医ニュース

2019年6月19日 第2895号

厚労省からガイドライン

 6月3日、厚生労働省から「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン(以下、GL)」の通知が発出された(地方自治法の規定に基づく技術的助言)。このGLは、患者に身寄りがない場合にも、医療機関が必要な医療を提供できるよう、また患者側も安心して医療を受けられることを目的に、同省の研究班が取りまとめたもので、4月24日の社会保障審議会医療部会で了承されていた。
 GLでは、対象として〝身寄りがない人〟に加え〝家族や親類へ連絡がつかない状況にある人〟や〝家族の支援が得られない人〟を想定している。基本的な考え方では「本人の意思・意向の確認と尊重」に関し、意思決定能力を固定的に考えず、病状や状況、行為内容によって変化するものと捉え、その時点の状況に応じて支援をすること、事前指示書やエンディングノートを記載していないか確認することとしている。
 そして、具体的対応として、(1)本人の判断能力が十分(2)判断能力が不十分で成年後見制度を利用(3)判断能力が不十分で同制度を利用していない――の3つの場合に分け、身元保証・身元引受等に関する6つの機能(①緊急の連絡先②入院計画書③入院中に必要な物品の準備④入院費等⑤退院支援⑥(死亡時の)遺体・遺品の引き取り・葬儀等――に関すること)それぞれを解説している。ちなみに(3)のケースで、入院計画書の説明を理解できないほど判断能力が不十分で、家族等もいないときには、本人への説明を試みた上で、その旨をカルテに記載することで対応するとしている。
 ただし、医療における意思決定については、本人の意思が確認できない場合の第三者による決定・同意に関して法令等でのルールは存在せず、後見人にも医療同意の権限はない。「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の考え方も踏まえ、病院の医療職だけでなく、成年後見人等やケアマネジャー、ホームヘルパーなど患者に関わる人が、繰り返し最善の方法に関して話し合いを行うことが必要としている。更に、身寄りがない人へのマニュアル作成、院内および地域での倫理カンファレンスの実施、臨床倫理委員会の設置などの体制整備を行うことが有効としている。
 なお、成年後見人等に期待される役割を以下のように整理している。▽診療契約の締結、医療費の支払い▽既往歴や服薬歴等を収集し提供、医療機関から提供された医療情報(おくすり手帳等)を適切に管理▽本人意思の尊重:意思決定しやすい場の設定/意思推定のための情報提供▽親族への連絡・調整(関わりの薄くなっていた親族の関与の引き出し)など。
 身元保証人等がいないことのみでの入院拒否は、医師法違反とされる。これから一層の少子高齢化の進展が進む中、身寄りのない人の医療に関する支援は、医療機関(従事者)・住民双方にとって重要な問題であり、一定の準備が望まれる。
(学)