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府医ニュース
2019年5月1日 第2891号
小泉内閣の「無駄を省け」の緊縮スローガンは、公共事業縮小、公務員削減など小さな政府路線(新自由主義)を加速させた。その言葉に国民は高揚感を覚え、民主党政権になっても事業仕分けという緊縮運動を支持。アベノミクスでは財政出動が第二の矢とされ反緊縮のエッセンスが入った。だが「国の借金が」という魔法の言葉で財政出動を依然「悪」として捉えている。そして現内閣が打ち出す消費税増税をやむなしと国民は半ば諦めているのだ。
財政破綻を理由に社会保障予算が縮小される中、医療費はプラス改定されたが、私の診療所では逆に診療単価は減少。ここでも、どこかをアップするなら別を削るという緊縮の思想が存在する。「消費税増税を医療費の財源に」という言葉は、デフレ下においては危険な提言である。結局、政府支出つまり財政出動せず、更に前回の消費税増税後は却って税収(政府収入)を減らし国民生活を圧迫したのが事実(注1)。医療と介護の現場で「働けど働けど……」となっているのは、必要とされる十分な賃金が個々に提供されていないからだ。イノベーションするのはいい。しかし、そこに血流(予算)が存在しない、もしくは他の臓器(業界)から血液を奪うのはデフレでは止めるべきだ。血液が供給されない臓器はやがて壊死するに違いない。
4月に入り、自民党西田昌司議員が国会質疑において、MMT(現代貨幣理論)を引用し積極財政を政府に提言した。MMTの説明は省くが、その論旨は『自国通貨を持つ政府の支出余地は一般的に想定されるよりも大きく、すべてを税金で賄う必要はない』というもの。また同時期、自由党山本太郎議員が新党を立ち上げるという報道が。同議員もMMTを基にした反緊縮を自らの政策として打ち出している。与野党からMMTによる反緊縮政策がいよいよ出てきたのだ。左右対立ではない、デフレにおいて緊縮か反緊縮かの対立が可視化されたと言っていい。医療費の財源においても議論の選択肢ができることを望む。(真)
筆者より:
掲載にあたり一部訂正をしております。
注1 平成26年の消費税増税後の27年税収は増加しています。28年は27年度より税収は減少しました。