TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

ミミズクの小窓

"夢見る頃"を過ぎると認知症リスクが高まる?!

府医ニュース

2017年12月27日 第2842号

 大阪府医師会員諸兄姉におかれては"夢を追いかけた日々"を想い出すことがおありだろうか。キング牧師はワシントン大行進の折、“I have a dream!”と演説し、20万人の聴衆を興奮の坩堝へと誘った。またウォルト・ディズニーは“If you can dream it, you can do it"と述べた。幾つになっても"夢を追いかける"ことは大切なのだ。
 「冗談じゃない、今も私は夢を追い続けている!」という方、ご同慶の至りである。「今更将来の夢と言われても困るが、睡眠中はよく夢を見るな~」という方、生理学的には問題あるまい。だが「最近めっきり夢を見なくなったな~」と感じている方、あなたのREM睡眠は減少して認知症リスクが高まっているかもしれない。
 最近、オーストラリアのグループが「フラミンガム心臓研究」の参加者で60歳以上の321名(平均年齢67±5歳、男女比1対1)を対象に、自宅ポリソムノグラフィーによる睡眠構造の検討とともに平均12±5年、最長19年間観察し、認知症発症リスクを解析した(Neurology Aug 23,2017)。観察期間中に32例が認知症(うち24例がAlzheimer型)を発症した。睡眠にREM睡眠が占める割合が少ないほど、またREM睡眠潜時が長いほど認知症リスクは高まり、睡眠時間にREM睡眠の占める割合が1%低下すると認知症リスクは9%上昇した。なおノンREM睡眠の深度と認知症リスクとの関連は認められなかった。
 睡眠中はREM睡眠とノンREM睡眠(徐波睡眠)を繰り返す。REM睡眠では、身体は筋弛緩状態にあるが、脳波は覚醒時に近似していて夢を見やすい状態である。従来、徐波睡眠の長短や深度と認知症との関連が注目されていたが、この研究はREM睡眠の相対的減少が認知症のリスクに関連する可能性を示唆しており、「夢を見なくなると認知症リスクが高まる」とメディアでも話題になった。
 REM睡眠には"記憶回路のメンテナンス"という意義もあるという。REM睡眠の短縮が認知症と関連?!といわれると、「夢を見なくなるとやばいかも」と思わないではない。もっとも"夢を見なくなる=即REM睡眠の減少"というのも短絡的だし、REM、ノンREMにかかわらず夢と関連するのは後頭葉皮質での低周波活動の減少であるとする研究もある(Nat Neurology 20:872,2017)。認知症との関連はさておき、やはり人はフォスターや岡村孝子さんの歌の如く、生涯"夢追い人"であるべきだとミミズクは信じる。意外と認知症予防効果があったりして……。