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十四大都市医師会連絡協議会

府医ニュース

2017年11月15日 第2838号

都市部が抱える「医療課題」を討議

 政令指定都市医師会などで構成される十四大都市医師会連絡協議会が10月21日・22日に東京都医師会の主務で開催された。3つの分科会をはじめ特別講演なども企画され、都市部における医師会の在り方を討議した。
 開会式では尾﨑治夫・東京都医師会長があいさつ。本協議会は、「都市部が抱える様々な医療課題」を協議する貴重な機会であり、今後も継続して活動する意義を強く訴えた。あわせて、「受動喫煙強化の流れを都市部から広げてほしい」との要請がなされたほか、訪日外国人が増加する中での熱中症対策・医療提供についても都市共通の課題とし、分科会での積極的な議論を呼びかけた。

第1分科会 タバコ対策

 はじめに、望月友美子氏(公益財団法人日本対がん協会参事/東京都医師会タバコ対策委員会アドバイザー)が「新たなタバコ流行――新型タバコ(加熱式タバコ)の有害性と問題点」と題して講演。健康への害などを詳説した。引き続き、各医師会がタバコ対策の取り組みや現状、成果を報告。「健康に関する専門家集団」として、喫煙の悪影響を啓発するための活動の観点で議論した。
 大阪府医師会からは、矢野隆子理事が、医師会および行政のタバコ対策に関して発言。府医では「禁煙宣言」を行い、敷地内における全面禁煙を実施していることに加え、自身が参画する大阪府のタバコ対策関連会議の状況を説明した。その上で、会員の禁煙は推進されている一方、大阪府内の女性の喫煙率が高いことを問題視し、「行政に頼るだけではなく、草の根的な運動が大切」との見解を示した。最後に座長の角田徹・東京都医師会副会長より、最終的には全面禁煙を目指すことが重要であるが、まずは受動喫煙防止条例の制定に向け、「十四大都市医師会東京宣言」を取りまとめたいとの提言があり、満場一致で承認された。

第2分科会 真夏における マスギャザリングへの熱中症対策

 2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を見据え、大規模イベント実施時の医療提供体制に対し、医師会の関わり方などを議論した。最初に、2題の講演が行われた。石川秀樹氏(帝京大学医学部救急医学講座講師)が「医療現場から見る熱中症の現状」について、宮本哲也氏(東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会大会準備運営第一局医療サービス部長)は「オリンピック競技施設における熱中症予防と対策」と題し、詳細に解説。その後、各医師会が▽熱中症対策の指針やガイドラインの策定▽日本医師会認定健康スポーツ医の関わり▽自治体との連携――などの状況を報告した。
 府医からは、鍬方安行理事が大阪の現状などを説明。大阪マラソン等の大規模イベントへの日医認定健康スポーツ医の派遣などは行っているものの、協定書は結んでいないと述べた。また、大阪府においてはマスギャザリングイベントにおける「行政の衛生部局としての担当」が設置されていないため、東京都医師会などの取り組みを参考にしたいとした。

第3分科会 外国人医療

 都市部における対策を探る中、まず、久村信昌氏(東京都福祉保健局医療政策部地域医療担当課長)、山田秀臣氏(東京大学医学部附属病院国際診療部副部長・講師)がそれぞれ、「東京都における外国人患者対応に関する取り組み」「データから見える課題とその対策」と題して講演し、各医師会のディスカッションに移った。
 府医からは宮川松剛理事が、外国人医療の取り組みを報告する一方、「医療ツーリズムとは一線を画すべき」と指摘。更に、「国策として訪日外国人を増加させるのであれば、医療面でも国・行政が責任を負うべき」と強調した。そのほか、各医師会からは、▽医療通訳の標準化▽問診票・マニュアルの策定▽標準的な費用の設定▽支払い対策――などの意見が出され、都市部ならではの課題を共有するとともに、問題点の解消に向けて医師会が取り組むことの重要性が確認された。

全体会議(2日目) タバコ対策「東京宣言」を承認

 翌日の全体会議では、各分科会の座長より議論の総括があり、前日の第1分科会で提案された「十四大都市医師会東京宣言」を検討。▽タバコ(加熱式タバコ等の新型タバコも含めて)のない社会・都市を最終的に目指す▽市民に対して、自分や他者に及ぼすタバコの有害性について充分な理解を得るよう努める▽行政に対して、まずは完全な受動喫煙防止が達成できるような措置を求め協力する▽未来の担い手である子ども達に対して、禁煙教育の徹底・充実に向けて、学校医等の立場から協力し、臨床現場でも努める▽自らの会員に対して、禁煙の必要性の更なる理解を進め、市民の模範となるべき〝医師の在り方〟を求める――とする条項を盛り込んだ決議を採択することが了承された。後日、改めて関係部署に周知される。

特別講演で横倉会長 今後の方針示す

 引き続き、横倉義武・日本医師会長による特別講演「日本医師会の医療政策」が行われた。まず、一般会計税収や国民医療費などの推移を追いながら、社会保障の在り方に言及。近年は財政緊縮の立場から、保険給付範囲の縮小などの動きが強まっているが、「社会保障を充実させることが国民の不安解消につながる」との考えを強調した。
 また、平成30年度診療報酬・介護報酬同時改定に触れ、「プラス改定」が必要な事由を説明。医療用消耗品など、技術料から包括して償還されている現状を見直し、「モノからヒトへの評価」にシフトすべきとの見解を示した。更に、医師会としての今後の方針を挙げ、▽健康寿命延伸に向けた取り組みの必要性▽かかりつけ医を中心とした地域包括ケアシステムの構築・推進――に関する方向性を提示。「かかりつけ医」が果たす役割の大きさを改めて訴えた。
 続いて第2席として、小林淳一氏(東京都江戸東京博物館副館長)が「シーボルト――ドイツ人医師の見た江戸・日本」と題して講演。シーボルトが収集したコレクションを通じて、当時の文化や風俗、習慣などを解説した。