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時事
府医ニュース
2017年11月1日 第2837号
10月2日、内閣府「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会」(座長:清家篤・慶應義塾学事顧問)の第6回会合が開催され、報告書案が大筋で了解された。この検討会は、年度内に新しい「高齢社会対策大綱」を策定するため、6月に立ち上げられていた。同大綱は高齢者対策基本法で規定され、案を作成する機関として内閣府に高齢社会対策会議が設置されており、検討会は有識者の意見を聴く場に位置付けられる。ちなみに現行の大綱は、平成24年9月に閣議決定されたものである。
報告書のタイトルは「すべての世代にとって豊かな長寿社会の構築に向けて」となっている。10年、20年先の風景を見据えて持続可能な高齢社会を作っていくことや、高齢者を支える発想ばかりではなく、意欲ある高齢者の能力発揮を可能にする社会環境を整えることが必要としている。
そして、全年代間で明確に共有されるべき目的意識として、1.すべての年代の人々が希望に応じて意欲・能力を活かして活躍できるエイジレス社会を目指す2.地域における生活基盤を整備し、人生のどの段階でも高齢期の暮らしを具体的に描ける地域コミュニティを作る3.Society5.0(後述)が可能にする新しい高齢社会対策を志向する――を掲げた。年齢区分で人々のライフステージを画一化することの見直し、産業界が参画しやすいような環境づくりへの配意、ビッグデータ分析による高齢社会の現況の適切な把握とエビデンスに基づく政策形成などが必要としている。
「高齢者の活躍の支援(活躍の場、活躍を妨げる障壁の除去)」「高齢者の生活基盤の充実(社会システムの進展、先進技術の進展とその活用)」の各論に続き、「高齢化する社会への対応力の向上」の項では、若年期から金融資産および人的資産の計画的な蓄積を行うべきとして、社会保障の知識に加えて金融リテラシーも若年期から習得できる社会的な仕組みを、また、国や地方公共団体が住まいや就業、税や社会保障等の業務データをビッグデータ分析に活用できる制度の整備を求めている。
さて、"新しい高齢社会対策を可能にする" Society5.0とは「総合科学技術・イノベーション会議」での検討を経て昨年1月に閣議決定された「第5期科学技術基本計画」に端を発し、「超スマート社会(必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会)」実現に向けた一連の取り組みを指す。サイバー空間とフィジカル空間(現実世界)の融合により、新しい価値やサービスが次々と創出され、人々に豊かさをもたらす、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く人類史上5番目の社会と華々しく謳われているが、果たして成算は、いかばかりか……。(学)