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医師・医療関係者のみなさまへ

時事

糖尿病地域医療活動とDPC地域医療係数

府医ニュース

2017年10月18日 第2835号

多様性を持った評価が課題

 新たな専門医制度のプログラムが明らかになりつつある。どのように医療制度に影響するか、関係者すべてが固唾を飲んで見守っている。一中核病院からすべてを語ることはできないが、初期変化は内科系にみることができる。7対1入院基本料の締め付けと相まって、内科専門医が動き始めている。内科系では救急患者の外圧が直接影響しているのであろう。救急患者トリアージの矢面に立ち、必然的に総合内科を前面に据えることで経営が成り立つようになってきたということである。これによって各科への紹介患者が増え、全科が活気づくことになる。しかし、経営圧迫で病院が淘汰される政策によって、重症患者に比重を置いた病院構造が作られている。「働き方改革」で緩和するとしても、いびつな医療政策と言わざるを得ない。「地域あってこその救急」という3次元的な自覚を、医師全員が持たなければならない。もう一歩踏み込んだ改革が第2波として必要であり、それがDPCの改革である。
 DPC制度は専門医制度と表裏一体にある。実際、専門性を評価する指標として、取り扱う疾患の重症度や教育研究機関である病院序列化の裏打ちがDPCによって行われている。個人的にこの10年間、糖尿病患者をはじめとする生活習慣病患者の地域医療体制に取り組んできた。しかし、全国的にも糖尿病連携手帳などの地域連携クリティカルパスは、その重要性は全く変化してないにもかかわらず、近年は沈滞気味である。先日、全国の中核病院の糖尿病科部長と話す機会があった。それぞれ、行政や住民とも協力して地域医療活動を行っているものの、「糖尿病の地域医療には極めて病院は無関心」ということで一致した。生活習慣病の患者の大多数が診療所に通院していることを考えると、現体制のDPCは救急医療体制では完成度は高いが、病院に収益の少ない生活習慣病対策、その延長上にある地域包括ケアに積極的に貢献するかは疑問である。
 DPCが目指す救急医療は地域医療にとって非常に重要であるが、その患者発生の母体を扱う診療科の地域医療活動が十分評価されていない。生活習慣病管理とDPCの接点は極めて少なく、あえていうならば地域医療係数が関連する。平成29年度第3回DPC評価分科会(8月4日開催)ではこれについて話し合われた。委員構成は臨床系では救急関連がほとんどで、生活習慣病関連の委員はひとりもいない。議事録で、事務局から『地域医療係数については5疾病5事業等に係る診療体制を評価する体制評価指数…』というくだりがあった。5疾病とはがん・脳卒中・急性心筋梗塞・糖尿病・精神疾患であり、5事業は救急医療・災害時における医療・へき地の医療・周産期医療・小児救急医療を含む小児医療をいう。5疾病5事業で地域医療係数に採用されていない項目は、糖尿病と小児医療だけである。糖尿病による死亡原因は上位に入っておらず、軽い病気と認識されている可能性があるが、DPCは研修病院の評価体制であるため、5疾病5事業で糖尿病の地域医療活動は評価されるべきであろう。糖尿病学会・糖尿病協会とも強力な生活習慣病管理システムを構築し、地域包括システムに即戦力のある体制を持っている。全国的な地域連携クリティカルパスである糖尿病連携手帳の配布を年余にわたり実施している実績もある。DPC病院群を含む現状を踏まえれば、このような病院における臨床活動が、糖尿病を突破口として、研修病院群を地域包括システムに関連させる政策は時代に即している。救急医療を一辺倒とするDPCに多様性を持たせるには、機能評価係数Ⅱの地域医療係数に糖尿病の活動指標は必要である。(晴)