
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
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府医ニュース
2017年10月18日 第2835号
平成29年9月7日、「働き方改革の中での新たな専門医制度」と題して、勤務医が抱える問題点を概観する懇談会が行われた。
小松病院総院長・一番ヶ瀬明氏は、大阪府医師会女性医師支援プロジェクトにより、府内の基幹型臨床研修病院の院内保育所設置は89%、病児保育室設置は53%、短時間勤務導入が92%と顕著な効果をあげたこと、産休育休中の代替医師を確保するための運用システムの検討が進められていると報告した。高槻病院外科部長・家永徹也氏は、研修医への周知は十分ではなく、外科系では長時間勤務で厳しい環境という覚悟はあるが、オン・オフが明確な体制提示とそれに見合った処遇が重要とした。また役割分担やチーム医療の推進が働き方改革になると指摘した。箕面市立病院総長・田村信司氏は新専門医制度について、内科系のサブスペシャルティ研修は、研修医・指導医ともその内容、研修施設の異動等で負担となること、高齢化に伴い総合内科疾患の救急患者が増加し、専攻医の負担増になっており、高度専門病院に専攻医が偏らない対応を求めた。市立東大阪医療センター副院長・木島祥行氏は、労基局に対応した結論として、原則的に残業は月45時間が上限で、特例で労使が合意した場合のみ月平均60時間との制約があるが、病院経営の観点から、人件費と十分な医療提供の両立には、ワークシェアリングなど革新的な概念転換が必要と指摘した。更に、南大阪病院名誉院長・宮越一穂氏は、専門医制度改革として、府医で地域限定専門医研修プログラムの創設を提唱した上で、大阪府下の2次救急病院の実態調査を行うなど、専攻医研修が可能なプログラムの策定を提案した。
現在の医療が抱える諸問題は、具体論で取り組むことが要請される。研修基幹病院には、地域限定型研修プログラムが運営できるような関連病院の整備が求められ、研修医や患者を広域に分散する地域医療体制において、2次救急の充実を兼ねた「大阪型研修制度」の創設、ワークシェアリングのモデルを各病院で試行し、能率化への体制づくり、医師不足を緩和する代替医師派遣制度の実現、病院を挙げた応召体制整備による医師職場環境改善――などである。しかし、画一的な働き方改革に医療をはめ込むこと自体が根本的に不可能なことは現場の医師にはよく分かる。働き方改革に呼応した体質改善の手を緩めてはいけないが、医師固有の働き方の社会的有用性を、分かりやすい表現で世論や行政に訴えることは、医師会が担う重要な役割であると再確認した。