
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
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府医ニュース
2017年10月18日 第2835号
大阪府医師会・毎日新聞社主催によるシンポジウム「生まれてくる奇跡――大切ないのちを考える」が9月30日夕刻、府医会館で開催された。これは出産や周産期医療をテーマとしたTBS系ドラマ『コウノドリ』の続編放映を機に、「大切ないのち」について考えようと企画。同ドラマに取材協力した医師や番組プロデューサーが講演などを行い、府民ら約200人が聴講した。
主催者あいさつで茂松茂人会長は、「すべての医師は、地域住民の健康増進を共通の目的に活動している」と述べ、本日の催しを通じて医療者の思いが伝わればと期待を寄せた。
引き続き、『コウノドリ』チーフプロデューサーの峠田(たわだ)浩(ゆたか)氏が、「ドラマ『コウノドリ』で伝えたかった周産期医療に対する思い」と題して講演。これまであまり描かれていなかった「周産期医療」をドラマの題材として取り上げたのは、「医療者が患者・家族に寄り添う姿や出産の現実を伝えたかったから」と明かした。また、入念に医療現場を取材したことでリアリティーが伝わり、「視聴者の関心が高まった」と振り返った。更に、今作のテーマである「生まれること、そして生きること」に関しては、出産という「奇跡」で終わりではなく、その後も続く子育てにも焦点を当てたかったと説明。ドラマを見終わった後に「生まれてくれてありがとう、産んでくれてありがとう」という気持ちにさせる作品にしたいと意気込みを語った。
次いで、荻田和秀氏(りんくう総合医療センター産婦人科部長)が、「奇跡のそばにいるということ――医療者から伝えたい思い」と題して講演を行った。同氏は前作のテーマとあわせて現実の医療における課題を指摘。妊婦健診を受けない事由でもっとも多いのは、「理解の不足」とする大阪産婦人科医会の調査結果や、望まない妊娠などに触れ、「正しい知識や情報を伝えることが大切」と強調した。また、「幸せホルモン」とも言われるオキシトシンは、分娩直後に最も分泌され、ストレスを緩和させる効果もあると紹介。ドラマを見て「オキシトシン」を得てほしいと締めくくった。
第2部では、関野正氏(毎日新聞社編集局科学環境部編集委員)がコーディネーターを務め、パネルディスカッションを実施した。峠田氏・荻田氏とともに、それまで司会を務めていた毎日放送アナウンサーの松川浩子氏が登壇。事前に聴講者から寄せられた質問を基に、1.家族のサポート2.安全な出産に向けた心構え3.無痛分娩4.リスクを伴う出産5.奇跡と思った瞬間――について意見を交わした。荻田氏は、印象に残る出来事はあるものの、「毎日が奇跡の連続であり、記憶が塗り替えられている」と発言。また、リスクを伴う出産についても、「妊婦や家族に受け入れられる覚悟があれば全力で支えたい」と背中を押した。松川氏は自身の出産経験を交え、家族・社会のサポートの必要性など見解を提示。峠田氏は、「様々な医療関係者の努力が奇跡を生む」とし、他人の人生をも背負う医師の姿を通じ、「奇跡の裏側を描きたい」と語った。
その後、笠原幹司理事が全体を総括。パネルディスカッションで話題となった「性教育」について補足説明するとともに、大阪府の周産期医療体制を解説した。笠原理事は、99%の妊婦は一次医療圏で完結していると前置き。それ以外の場合でも周産期母子医療センターや救命救急センターが大阪府全域をカバーしているとし、「今後も妊婦が安心して出産できる環境整備に努めたい」と加えた。