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ミュージカル「にんじん」

府医ニュース

2017年10月4日 第2834号

 大阪松竹座でミュージカル「にんじん」を観ました。
 原作はフランスの作家ジュール・ルナールが1894年に発表した自伝的小説です。今年還暦の女優大竹しのぶさんが、22歳の時演じた主人公の14歳の少年役を再び演じることが話題になっていました。
 物語の舞台は南フランスの小さな村。主人公の少年は、赤毛で顔がそばかすだらけのため、みんなから「にんじん」と呼ばれています。
 にんじんは実の母親(演じるのはキムラ緑子さん)から、ひどい仕打ちを受けています。みんなの嫌がる仕事を押し付ける、好きな物を食べさせない、等々。常ににんじんを罵り、銀貨がなくなったらにんじんが盗ったと決めつけます。愛情を示すことは全くありません。母親は、自分でもにんじんを虐待していることは分かっているのですが、どうしても自分を抑えることができません。
 父親は、そんな母親を見ていながら、止めようとしません。そもそもこの夫婦は直接言葉を交わすことが全くありません。まず救いの手が必要なのは、この母親であり、この夫婦ではないかと思いました。
 この舞台には、母親が反省して親子が抱き合って幕、のような安易なハッピーエンドはありませんでした。父親とは心が通じたにんじんが、自分を大切にして強く生きて行こうと決意する場面で明るく終わっていましたが、母親との関係は最後まで変わりませんでした。
 現代なら、この家族に何らかの救いの手が伸べられることはあるのでしょうか?
 それにしても、大竹しのぶさん、キムラ緑子さん、名演でした!(瞳)