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医師・医療関係者のみなさまへ

ミミズクの小窓 Returns

ストレスは扁桃体を活性化し心血管病へと導く

府医ニュース

2017年5月31日 第2821号

 慢性的なストレスが心血管病のリスクとなることは周知の事実であり、虚血性心疾患は1.5倍(Eur Heart J 2013)、末梢動脈疾患、心不全はそれぞれ3.4倍、1.8倍(Atherosclerosis 2014)に増加するという。そう、emotional stressは喫煙、高血圧、糖尿病に匹敵するリスク・ファクターなのだ。だからせっかく気合いを入れて間食を我慢しても、それがストレスになれば効果無し、ともなり得る。
 げに恐ろしきはcardiovascular Karmaである。しかしこの 〝stressが心血管病に結び付くメカニズム″は解明されていなかった。
 とはいえ、情動が脳のネットワークを刺激し、ホルモン動態や自律神経系を介して負の連鎖が生じて心血管病を発症となれば、扁桃体が怪しい。ここに着目したマサチューセッツ総合病院のグループは18F-FDG-PETを用いた縦断的研究と横断的研究を組み合わせてストレス――心血管病発症のメカニズムを明らかにしようと試みた(Lancet online,Jan11 2017)。ポイントはPETにおける扁桃体活性、骨髄活性、動脈炎症の関係である。
 縦断的研究の対象は293名(平均年齢55歳、四分位点間距離45.0~65.5歳)、平均3.7年の観察期間で心血管病が22例に発症した。扁桃体活性の強さは骨髄活性と動脈炎症の程度と相関し、心血管病のリスクと関連していた。一方、横断的研究の対象は心理分析を受けた13名で、扁桃体活性は動脈炎症の程度と相関し、自覚するストレスの程度は扁桃体活性、動脈炎症、CRPと相関していた。要するに慢性ストレス→扁桃体活性増強→骨髄活性増強→動脈炎症→心血管病という図式である。なお、安静時の扁桃体の活性が高いほどよけいにマズイそうだ。
 さて、この論文が正しいならば、やるべきことはひとつである。慢性ストレスを減少させ、著者らの言葉を借りれば〝心理学的well-being″を達成すれば良い。でもどうするのだ!? そこも書いてくれ! 第一、自分ではリラックスしたと思い込んでも扁桃体がリラックスしていないと意味がないではないか。「well-beingか否かは扁桃体の返答次第」……。かくなる上は、信仰心の厚いミミズクは阿弥陀様にすがろうと思う。なぜ阿弥陀様かと言えば、扁桃体amygdalaを音読すれば「アミグダラ」、何となく梵語っぽいし、何度も繰り返せば「アミダサマ」と聞こえなくもない……。実際に声に出して読んだ方に神の祝福を……。言い忘れたがミミズクは多神教である。