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時の話題

認知症高齢者の徘徊・行方不明の現状

府医ニュース

2016年6月1日 第2786号

――大阪府の実態調査から

 認知症高齢者の増加とともに行方不明高齢者が増加している。認知症高齢者が不慮の事故に遭い、家族が責任を問われて損害賠償を請求されることもある。また、認知症の周辺症状と位置付けられている徘徊は、家族・介護者の大きな不安・悩みとなっている。そのような中、大阪府では、認知症等高齢者の行方不明にかかる実態調査を行っており、昨年9月9日に平成26年度の調査結果を公表した。
 調査結果では、公共交通機関や自転車等での移動が増加しており、更に徒歩での移動距離も伸びていることから、前年度調査より行方不明になった場所から発見場所までの移動距離は長くなっていることが分かった。身体的に元気な高齢者が多く、交通利便性の高い大阪府の地域特性などが影響していると考えられた。
 発見者については、警察・救急に次いで住民や通行人が多いが、最近は介護事業所、コンビニエンスストア、飲食店、電車、バス、タクシーなどで発見されるケースが増加している。約5割は自宅近くや市内で発見されているが、他府県で発見されるケースが昨年の約2倍に増加しており、その多くが以前生活していた場所や生家に向かっていた。
 認知症高齢者が以前住んでいた家や勤めていた職場、生家に行こうとして行方不明になることは少なくなく、行方不明者の発見には居住地域のみではなく、他府県を含めた広範囲での連携、情報の共有および行動パターンをあらかじめ把握しておくことも必要である。しかし、事故防止のためには可能な限り、居宅近くでの早期発見が重要であることは言うまでもない。
 現在、府内の各市町村では様々な取り組みが行われている。早期発見・保護のための対策としてSOS事前登録、ネットワーク配信、警察の届け出、衣類・持ち物等への記名などが推進され、これらすべての取り組みが今回の調査では前年度よりも増加していた。
 徘徊後の要介護度認定については、要介護2の割合が減少し、要介護3・4・5が増加傾向にあり、認知症高齢者の徘徊が家族・介護者の大きな負担要因とされ、行方不明をきっかけに介護度が上がる傾向が見られた。また、高齢夫婦2人、高齢独居世帯などが増加し、地域・福祉の目が十分に行き届きにくい現状がある。
 現在、地域で認知症カフェなどの認知症高齢者が集い、見守る環境整備が進みつつある。今後、高齢化問題が一層深刻になると考えられる大阪府であるが、行政区域を超えた施策とともに地域で認知症高齢者を見守る取り組みの推進が重要と考えられる。