TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

時の話題

療養病床・慢性期医療の在り方

府医ニュース

2016年3月2日 第2777号

在宅医療の成否が鍵

 地域医療構想は、一般病床を高度急性期・急性期・回復期・慢性期の4つの機能に分類し、2025年に必要な医療機能、病床数を予想して医療機関の自主的な取り組みによって徐々に目標値に収斂させて行く。大阪府においては、今年度中に策定される予定である。一方、昨年7月から厚生労働省で「療養病床の在り方等に関する検討会」が行われていたが、1月28日、慢性期のサービス提供体制の新たな選択肢の整理案がまとまり、その内容が公表された。
 療養病床等の再編については、昭和48年老人福祉法改正により老人医療費が無料化されたことなどから老人病院が増加し、社会的入院が問題となった。58年に老人病院は医療法上、特例許可老人病院に制度化され、医師、看護師を減らし、介護職員の配置を多くするなど介護機能の評価が行われるようになった。更に平成5年の医療法改正で、一般病院の長期入院患者の受け入れのための療養型病床群が創設された。
 12年には介護保険法がスタートし、一部は介護療養型医療施設とされた。その後、再度医療法改正により、療養型病床群と特例許可老人病院は療養病床として一本化された。18年の診療・介護報酬同時改定に際し、医療・介護療養病床群で入院患者の状況に大きな差はなかったことから、療養病床の再編成を行うことになり、老健施設等への転換を促進することで介護療養病床は23年度末に廃止されることになった。
 しかし、施設への転換が遅々として進まなかったことから、23年介護保険法改正で介護療養病床の廃止・転換期限は29年度末まで延長されることになった。27年3月時点、介護療養病床は18年に比べ5.9万床減少し6.3万床、医療療養病床は1.5万床増加し27.7万床となっている。施設移行が進まなかった理由としては、介護療養病床は看取りを含む長期療養を目的としており医療ニーズが高い一方、介護老人保健施設は在宅復帰、在宅生活支援等を目的としているため、提供される医療、利用者が異なっていることなどが考えられた。
 今回の整理案では、慢性期の新類型として「住まい」の機能の強化を求め、長期療養を目的とした「医療内包型」サービスと、居住スペースに病院・診療所が併設した場で提供する「医療外付け型」サービスが提案された。更に「医療内包型」は、介護の必要度の高い24時間看取り・ターミナルケアなどの機能を担う類型と、オンコール体制による看取り・ターミナルケアを行う類型に細分化するとしている。
 今後、慢性期医療は地域医療構想による一般病床と療養病床の再編で整備されていくと考えられるが、在宅医療の成否が鍵を握っていることは言うまでもない。