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時事

2016年診療報酬改定における在宅医療

府医ニュース

2015年10月7日 第2762号

「同一建物減算」の緩和措置は見直されるか

 2014年度診療報酬改定では、不適切事例への措置として、同一建物居住者に対する在宅時医学総合管理料(在医総管)等の点数が約4分の1に引き下げられた。一方、減算を回避できる緩和措置も取られたが、緩和措置により診療の効率が下がるのみならず、在医総管算定を目的とした不必要とも思われる不規則・不定期な訪問診療が一部の在宅専門医療機関を中心に認められており、見直しが必要となっている。厚生労働省が中央社会保険医療協議会(中医協)に示した在宅医療の論点について、次期改定の行方を検討した。
 2014年度改定では、高齢者住宅や特定施設(以下、同一建物)などの複数の居住者に対して同一日に訪問診療を行った際の在医総管等が約4分の1に引き下げられた。ただし、月1回以上、個別の訪問診療を行った場合は従来の高い管理料(すなわち、同一建物以外)を算定できる緩和措置も導入された。この緩和措置を利用して、減算を避けるために個別に患者を訪問する、効率性の低い、不規則・不定期な訪問診療が行われている可能性があることを問題視し、次期改定では、この緩和措置が見直される可能性が高い。1日に診る患者数に応じて訪問診療料を多段階で評価する方法や、1人の医師が管理できる患者数を制限すべきと考えるのは筆者のみではないようである。
 患者の疾患や状態に応じた報酬体系の導入が次期改定の大きなポイントとなりそうである。厚労省は医学的管理の難しさや診療時間の違いなどに応じた報酬体系の導入を検討する方針を示し、中医協の委員も大筋で了承したとのことである。評価方法としては、在医総管等について患者の疾患や状態によって異なる点数を設定することや、指導管理などの評価を充実させることがあるが、困難が予想される。
 一方、月1回の訪問診療でも算定可能な低い点数を設定するなどして、在医総管等の訪問診療回数の要件を緩和することにより軽症患者への訪問回数を減らし、より重症な患者への訪問診療を増やす等の柔軟な報酬体系への改定も必要となっている。
 また、主治医が月2回程度同一建物の多数の居住者に訪問診療を行った別の日に、同一医療機関の別の診療科(専門)の医師が訪問診療を行うことにより、従来の高い管理料を請求する例も認められる。他方、現在の診療報酬制度においては、一患者に対しては一医療機関の医師による訪問診療しか認めていない。今回、チーム医療による複数科医療機関の訪問診療を受けることができるように改定することが必要である。(中)