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ガリ版刷り

府医ニュース

2015年8月19日 第2757号

 別の物を捜して我が家のブラックボックスと化した戸棚をかき回していた時、高校時代に所属していた文芸部のガリ版刷りの部誌が出てきました。
 ガリ版刷り(謄写版印刷)は、日本では1980年代頃まで使われており、どこの学校にもそのための道具がありました。ロウ紙というパラフィンなどを塗った専用の紙をヤスリ盤の上にのせて、鉄筆で文字を手書きし、それを印刷する紙の上にのせ、シルクスクリーンを被せ、その上からインクを付けたローラーを転がして、一枚一枚印刷するものです。
 私の高校の文芸部では、自分たちの「小説のつもり」「詩のつもり」などの作品を載せたガリ版刷りの文集を作り、文化祭の時に机の上に積み上げて、「御自由にお持ち帰り下さい」にしていました。何部刷ったのか、はたして持ち帰ってくれた人がいたのかは、さっぱり覚えていません。
 私の記憶の中には、夕暮れ時に古い校舎の雑然とした部室で、ローラーを転がして印刷していた自分の姿が、インクの匂いとともに浮かびます。書いて印刷するだけで満足し、多くの人に読んでもらいたいとは別段思っていなかったように思います。
 今、ガリ版刷りをしなくても、ネットを通じて誰でも簡単に、誰にチェックされることもなく、多数の人に向けて自分の書いたものを発信できるようになりました。しかし、そのことには功罪両面が生じています。
 偶然見つけた部誌により、懐かしさとともに情報発信の今昔の違いについて考えさせられました。(瞳)