
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ
時事
府医ニュース
2015年2月4日 第2738号
コンピューターは進化したが、ファイルを3次元的に開くことはできない。あくまで前面のファイルを閉じ、次のファイルを開ける平面での操作になる。系列化された情報は、整然と整理された配列ではあるが、目的とする情報に行き着くまでに多段階の操作が必要とされる。膨大な情報を記録するには優れた方法であるが、日の目を見ることもなく、永遠に忘れられる項目もある。
電子カルテシステムには、膨大な情報を記録する長所はあるが、診療行為に一定の影響を与える。例えば心電図をオーダーしようと思えば、まず検査の項目を探し、そこから複数の入力を要する。簡単ではあるが操作数がやたらと多い。だから無意識に一番効率の良い選択肢、すなわち「長期間検査をしない」というネガティブな思考がよぎらなくもない。
このような状況を解決するため、現在のコンピューター仕様で、3次元横断的な仕組みはないかと試行錯誤した結果、テンプレート機能に行き着いた。各社コンピューターに標準仕様されており、電子カルテ内で起動するツールで、ユーザーが自由なデザインをしてもよい領域である。付録のような存在と思っていたが、プログラムを組み込めば、思考は形になる。
早速、全く新しいテンプレートを作成した。生活習慣病関連項目に、計算処理項目を付け足した1画面のダッシュボードで、電子カルテのデータベースから、計算処理をした数値を提示でき、個々のデータファイルを開ける必要がない。現在血液検査に関しては、現在値のみならず、5年間の平均値も提示するように設計している。重回帰分析等の統計処理も可能である。日中は電子カルテの速度が落ちるので、夜間に複雑計算をして次の朝には結果が出る。テンプレート機能という、コンピューター専門家にとっては容易なツールも、分野が異なれば金の斧になる。各種データはボタンクリックやスクロールで選択し、診察中はキーボード操作は極めて少なく、マウス操作だけで片手記入ができる。実際キーボード操作よりも、マウス操作の方が視覚的で早い。また1画面で表示する方法は違うファイルに移動する必要がなく、大変重宝している。更に、患者と対話しながら記入する際の微妙な眼の導線を踏まえ、項目の配置にも工夫した。関連項目はまとめ、話の流れに従った位置取りを心掛けた。そして一番ユニークな機能は、このダッシュボードの出力形式を、自由にデザインしたことである。仮に出力を漫画化すれば、雪の女王が登場して説明するような、そういう変換も可能なのである。
コンピューター専門家にとっては日常茶飯事なことも、我々のような臨床家では、近付き難い『京』のような概念を持ってしまいがちである。しかしテンプレート機能は、研究機関とはほど遠い介護や医療現場に眠る、膨大なアイデアを掘り起こす手段になる。地域医療においても気軽にプログラムできる環境づくりが、ICT連携事業を発展させる有力な柱になるのではないかと思う。(晴)