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再び! TPP下における「薬剤の適応症追加」について

府医ニュース

2014年5月28日 第2713号

 「しつこい!」と思われるかもしれないが、それでも、このことはきちんと伝えておきたい。昨年12月、当筆は、抗てんかん薬として長く用いられていたゾニサミドの適応症に「パーキンソン病」が追加された時点で、薬価が130倍に跳ね上がったことを問題提起した。
 オーファン・ドラッグ(希少疾病用医薬品:対象患者が5万人以下で、難病が多い)であり、降圧薬や高脂血症治療薬などに比べれば「処方量は少ない」が、それでも異常な高価格であり、「一物多価」という矛盾に加え、(不幸にも)有意差をつけられてしまった対照薬の薬価を防衛するといった側面も併せ持っており、いずれにせよ「公的国民皆保険制度」という、我が国の社会保障制度・倫理とは相容れないものであることは間違いない。
 さて、脳梗塞予防薬として広く用いられている抗血小板薬「シロスタゾール」は1988年に薬価収載されて以降、「脳梗塞発症後の再発抑制」を目的に広く処方されてきた薬剤である。近年、この薬剤がアルツハイマー型認知症の進行予防薬として期待されるに至り、今秋より、軽度認知障害患者を対象とした治験が開始されるようだ。
 我が国では、超高齢化社会の到来に伴い、団塊の世代が70歳代になる2020年には認知症の患者数は300万人を超えると予想される。近い将来、膨大な量のシロスタゾールが処方されるようになるのは間違いないだろう。
 しかし、TPPにおける知財権保護のルール下、「アルツハイマー型認知症」の適応をとった時点で、シロスタゾールの薬価が一体、どれくらいのものになるか想像していただきたい。製薬会社のはじく算盤の音は、また、我が国の医療への「挽歌」でもあるのだ。(猫)