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時事
府医ニュース
2014年5月28日 第2713号
5月12日、日本老年医学会から「フレイル」に関する提言が公表された。同学会では、「高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、機能障害、要介護状態、死亡などの不幸な転帰に陥りやすい状態」とされる Frailty について、関係者にほとんど認識されていない上、これまで用いられてきた「虚弱(あるいは衰弱、脆弱)」という訳語が十分でないとして、認知度を上げるワーキンググループを結成していた。会員への公募も行って検討した結果、虚弱に代わって「フレイル」を使用する合意を得たとしている。
Frailtyは、生理的な加齢変化と、機能障害・要介護状態の中間にある状態を指す。筋力の低下により動作の俊敏性が失われ、転倒しやすくなる身体的問題だけでなく、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題を含み、適切な介入により再び健常な状態に戻る可逆性も包含する概念とされる。
最も広く使われてきた基準は、米国で作成された、①体重減少(4.5㎏/年)、②易疲労感、③握力低下、④歩行速度低下、⑤活動量の減少――のうち、3つ以上を満たすというものだが、精神や心理、社会的要因をも含めるべきとして、世界中で議論が進んでいる。
上記の5要素は互いに関連しあって、Frailty cycleと呼ばれる悪循環を形成する。この中では、低栄養とサルコペニア(加齢に伴う筋力の減少、または老化に伴う筋肉量の減少)が中核として位置付けられる。サルコペニアは、ギリシャ語で筋肉を意味する sarxと喪失を意味するpeniaから成る比較的新しい造語である。
Frailtyに該当する高齢者においては、体の内的環境を維持する恒常性維持機構が低下しているため、疾患の治療や管理において慎重さが求められる。歩行に問題がある高齢者では、むしろ血圧の管理をする方が予後が悪いという報告さえあり、薬剤を用いないか、ごく少量で管理することが重要との見解もあり、医学的対応の見直しも必要になる。
改善のための介入に関しては、これまで栄養補給(たんぱく質、アミノ酸など)とレジスタンス運動の併用が、効果を期待できると報告されてきたが、更なる知見の集積が待たれている。
現在、介護保険制度の中で、基本チェックリストにより判定される「二次予防事業対象者」として“虚弱”者対策が指向されているが、この提言を機に概念が浸透し、低栄養や感染の予防と併せ、より強力なアプローチが行われることにより、要介護状態や健康障害の前段階で対処し、老化と廃用の悪循環を絶ち、健康寿命を延ばすことが期待される。(学)