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医師・医療関係者のみなさまへ

勤務医部会活動報告

府医役員と勤務医部会役員との懇談会

府医ニュース

2024年10月30日 第3088号

新たな地域医療構想に向けて

 令和6年度大阪府医師会役員と勤務医部会役員との懇談会が9月5日に府医会館で開催され、41人が参加した。
 冒頭、中尾正俊・府医会長のあいさつがあり、その後懇談が行われた。懇談ではまず、基調講演として「新たな地域医療構想に向けて」と題し、江澤和彦・日本医師会常任理事が講演。江澤氏は、はじめに「新たな地域医療構想に関する検討会」の議論について解説。検討会では、2026年から40年にかけての地域医療体制の方向性が検討されているとして、以後内容を詳説。まず、85歳以上の人口増加に伴い、特に認知症患者数の増加が指摘されているが、高齢化の進行具合に地域差があるため、医療資源の供給格差が課題となっているとした。また、現在、高度急性期から慢性期までの病床機能の区分を整理する作業が進行中で、これらの機能区分に関するさらなる議論が必要であるとし、医療資源投入量を基準にした病床区分に関する懸念があるため、より適切な基準の見直しが求められていると強調。その上で、今後、外来・在宅医療の強化が必要で、特に在宅医療と介護の連携が不可欠とし、訪問診療や訪問看護だけでなく、介護ヘルパーなどへの支援体制を整備し、特に過疎地では人的リソースの確保が課題であるとした。
 その他、医師や看護師などについても、従事者の減少が予測されており、特に過疎地では医療従事者の高齢化や診療所の減少が深刻とし、40年には、働く世代の5人に1人が医療・介護分野で従事すべきとの試算があるが、これが実現できるかどうかは不確実であると展望した。
 また、医療機関の経営難にも触れ、多くの医療機関がコロナ禍における支援金終了後、経営悪化に直面。入院単価の下落や今後の財政的持続可能性が問題視されており、現在の入院患者数減少の傾向や医療費削減の政策が医療機関へ大きな負荷をかけているとの見解を示した。そして、今後の議論の方向性として、25年までに新たな地域医療構想ガイドラインが策定される予定と見通した。
 最後に、医療提供体制や医師不足の問題について触れ、医師偏在指標や外来診療に関する指標については課題があるとし、指標についての見直しが必要であるとするとともに、少数地域の医師確保については、国として医師少数地域への支援や経済的インセンティブが必要ではないかとの議論がなされているとした。
 講演後は、新井基弘・府医勤務医部会常任委員、辻正純・東淀川区医師会長、長谷川順一・同部会常任委員がそれぞれ登壇し、各地域の状況や病院・診療所それぞれの立場から発表がなされたのち、長時間にわたり活発な意見交換がなされた。

府医勤務医部会副部会長(府医理事) 杉本 圭相